有山展初日を終えて

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kunelゆめ雲のうえ書籍新刊書籍書籍

 本日、「有山達也 装幀、雑誌のしごと展」の会場で数々の書籍、雑誌を搬入し、展示の設営をしました。
 有山さんの職業はアートディレクターです。アートディレクターの仕事について詳しくない方でも、雑誌「ku:nel」(マガジンハウス)はご存じなのではないでしょうか。有山さんは、その「ku:nel」に創刊から関わっています。雑誌創刊のアートディレクターは、「こういう雑誌にしよう」という土台を作る大きな役どころ。レイアウト(ページデザイン)に限らず、企画やページの流れ、次のページをめくりたくなる仕掛け、写真家選びほか、さまざまな提案も行います。そうして、雑誌のコンセプト(メッセージ)を美しく、スムーズに読者に伝えるために最善を尽くすわけです。編集長的な仕事でもありますね。
 企画当時、「ku:nel」編集部では、「普通の暮らしを取り上げるライフスタイル誌」にしたいと漠然と考えていたそうです。そこに、今の「ku:nel」スタイルを持ち込んだのが有山さんでした。
 「ku:nel」が隔月刊化された2003年以降、書店の雑誌棚は大きく変化しました。次から次に類似した雑誌が創刊され、“ライフスタイル誌”という棚が生まれたのです。これも、「ku:nel」の情報提示のあり方が新鮮だったこと、そして売れたからでした。当時、「ku:nel」の評判として、「30,000万部印刷して、25,000人が定期購読する雑誌」と耳にしたことがあります。雑誌は通常、店頭でいかに売れるかが鍵です。この数字が誇張であったとしても、定期購読者が多いという事実は、読者にきちんとメッセージが伝わった証だと思います。

 有山さんが手がけた雑誌、書籍は、著者のメッセージを心地よく私たちに読ませてくれます。「人と人とをつなげるデザイン」といった感じでしょうか。「ku:nel」もそうですよね。出版社と読者という関係だけじゃなく、原稿書いた人、写真撮った人、料理作った人、スタイリングした人、みんなすぐ近くにいるような、そんな気持ちになりませんか?
 「人に興味がある、人がおもしろい」「半径数メートルへの発信」
 有山さんはよく、こんな言葉を使います。
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 10月10日まで中央区薬院にある「B・B・B POTTERS」の5階で、「有山達也 装幀、雑誌のしごと展」を開催しています。書籍約140冊を歴史が分かるよう、発行年順に並べています。雑誌はku:nelを生む礎となった貴重な雑誌「ゆめみらい」も全号揃え、そのほか制作過程が分かる貴重な資料もお借りし、展示しています。
 
 「人に興味がある、人がおもしろい」「半径数メートルへの発信」の言葉の意味が伝わる展覧会になったと思います。
 日本初の作品展です。ぜひ、ぜひ、お越しください。

text by 末崎(詠人舎)