藤村興晴

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図書出版・石風社 勤務
尼崎市生まれ。地元出版社・石風社で編集・営業・コック担当。

図書出版・石風社*久本三多 ひとと仕事

久本三多 (非売品)

まさか自分が地方出版社で働くことになるなどとは夢想だにしていなかった十九の春。興味本位で飛び込んだ福岡のNGO・ペシャワール会で、地元出版社のオジサン社長に出会った。アフガニスタンとパキスタンで地に根を張った医療活動を展開する中村哲医師の著作を数冊、世に送り出していた。ときどき、そのオジサン社長に地元出版の話をいろいろ聞いた。聞けば福岡には葦書房という気骨の版元があって、夢野久作の著作や一連の水俣関連の著作、そして筑豊の炭坑シリーズや玄洋社もので知られているのだという。実はオジサン社長自身もその葦書房出身者で、久本さんという名物社長のもとで数年働いたのち、独立して今の屋号を立ち上げた。だが当時久本さんはガンに冒され、余命いくばくもない状態だった。しばらくして久本さんは世を去り、小生は何の因果かオジサン社長のもとで丁稚を始めた。今もそこで世話になっているのだが、ほどなくしてこの追悼文集が刊行された。没後十年以上経った今でも、ひんぱんにこの本をめくる。一度もお会いできないままだった彼のことを、いつも意識しながら仕事をしている。