「激オシ文庫フェア」講評

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◎今年「激オシ文庫フェア」の結果

第1位 売上げ冊数=210冊
『風が強く吹いている』

三浦しをん/新潮社
激オシ人;積文館書店筑紫野店 酒井麻貴さん
激オシコメント;
「まったくの素人たちが箱根を目指す!そこには自分との葛藤や仲間との絆があったり。夢中で疾走感溢れる作品!」
風が強く吹いている (新潮文庫 み 34-8)

第2位 売上げ冊数=134冊
『手紙』

東野圭吾/文藝春秋
激オシ人;金山堂本店 菅中元子さん
激オシコメント;
「自分は差別など無縁だと思ったが、この世には差別は存在する。殺人犯を兄に持った弟。これからの人生は・・・。」
手紙 (文春文庫)

第3位 売上げ冊数=101冊
『悪夢のエレベーター』

木下半太/幻冬舎
激オシ人;積文館書店新天町本店  中村由里さん
激オシコメント;
「浮気相手のマンションのエレベータ内に閉じこめられた男。相次ぐ驚きの連続が最後の最後まで止まりません!」
悪夢のエレベーター (幻冬舎文庫)

◎かってに講評:
たいへん長らくお待たせ致しました。今年の「福岡の書店員が選んだ激オシ文庫フェア」。やっと結果発表です。ご覧の通り、第1位は三浦しをんさんの『風が強く吹いている』です。おめでとうございます。
今年で第3回目の「激オシ文庫フェア」は、福岡県下(一部佐賀・熊本)の合計50書店で1ヶ月にわたって開催され、昨年同様100点+1の合計101種類の文庫がノミネートされたわけですが、1〜3位はある意味で穏当な結果でした。やはり東野さんは強いし(1回目・第1位)、三浦さんは昨年の「激オシ」にもノミネートされた『むかしのはなし』など、まだ若くこれからが楽しみな作家です。
ちなみに第3位の木下半太さんは脚本家・俳優としても活動されている様子。脚本家で作家といえば、今年ブックオカのゲストとしてトークショーにお招きした千野帽子さんが強く推薦されていた松尾スズキさん(来年早々に刊行予定の『老人賭博』がめっぽう面白いそうです)しかり、青山真治さんしかり、古いところでは向田邦子さんや久世光彦さんが有名ですが、けっこう通底することがあるんでしょうね。個人的には、詩人ですごい小説も書く人、というのが最近いなくなったなぁ、という気がしますが。
さて第3位まではさておき、次点以下で注目したいのは『インドなんて二度と行くか!!ボケ!!』(さくら剛/アルファポリス)。フタバ図書TERA福岡東店の浅井智子さん推薦の一冊。売上げは93冊でした。おしい! アルファポリスという出版社さんのことは恥ずかしながら存じ上げませんでしたが、このご時世、安価な文庫・新書の需要は高いように思います。大手ばかりではなく、小粒でも面白い文庫や新書を出す版元が増えるのは、一読者としては歓迎です。書店員さんにとっては頭の痛いハナシかも知れませんが。
また逆に、安価とは言えないけど講談社文芸文庫、光文社古典新訳文庫、ちくま文庫、洋泉社MC新書などのように、絶版になった価値ある作品を復刊してくれるのも大大大歓迎です。
さて昨年隠れたリバイバル大ヒットとなった『柿の種』(寺田寅彦/岩波文庫)を推薦したわれらがブックオカ実行委員長・ブックスキューブリックの大井実さんが今年あげた『コルシア書店の仲間たち』(須賀敦子/文藝春秋)も75冊と大健闘しました。昨年ほどまでは行かなかったかも知れませんが、ある意味渋好みの路線に行きたいブックオカとしては、希望の一冊です。
さらに今年は北九州に本拠をかまえる金山堂グループさんの健闘が光りました。本店・菅中誠二さんの推した『特別法第001条DUST』(山田悠介/幻冬舎)は73冊。第2位の菅中元子さん(ご親戚? 未調査)ともども、おめでとうございました!
*掲載後、三浦しをんさんのお名前の誤表記の指摘を頂きました。謹んでお詫び・訂正致します。