読書で脂肪は減らせるかって
書店で働いていると
「月何十冊も本を読むんですか?」
「子どもの頃から本が好きでこの仕事に就いたのですか?」
とよく尋ねられます。
わたしはそうでもありませんでした。
毎日テレビ・ラジオ漬けで、小学生の頃いくらか漫画を読んでいたかな・・・というくらいです。
本を読むようになったのは大人になってから。お酒じゃあるまい。
この仕事を始めてから、「みんなそんなに読んでいるのか」と焦りはじめたのですが、時すでに遅し。子どもの頃から読書に親しんでいる方には敵わないのだから、いっそ今から少年少女の気持ちになって読めばいいのさと開き直っています。
しかしこの「少年少女の気持ち」がほんとうに難しい。
読めば読むほど、身も心も脂肪がついて、吸う息だけでなく、吐く息までホコリっぽくなっていることに気づかされるのです。
あらゆる場面・登場人物たちにすこしも感情移入ができず、読むことすら苦痛になって、好きな作家の作品にさえ、手を出す気にならないこともあります。
何を失ったらこうなっちまうんだと苛立っていた数年前、梨木香歩の『ぐるりのこと』(新潮社)に出会い、いくつかの答えをもらいました。
児童文学作家として著名な梨木さんの読者は女性が圧倒的なようですが、エッセイは男性にもお薦めです。
物語にも頻繁に登場する瑞々しい自然描写も然ることながら、現代批評、近い未来への強い願い、そして身の回りで起きる小さな出来事までが、鋭い視点で綴られています。
先日この本が文庫化されました。2007年新潮文庫100冊の中にも入っていますので、見つけたらぜひ、手にとってみてくださいね。
今、書店は文庫の季節です。グッズをもらえるキャンペーンなどもあり、カラフルな帯や看板でとても賑やかです。フェアのそばには本を推薦する小冊子も置いてありますので、推薦文を読んで気に入ったものはぜひ、読んでみてください。
感情に流されず本を薦めるコメント群は、さすが、プロのお仕事。ほとんどハズレがありません。
明日のために、読書をどうぞ。どんな明日をお探しですか?
一攫千金?それともSF? 意外と古典の中にあるかもしれませんよ。
新潮社 (2007/06)
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丸善福岡ビル店 徳永圭子
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